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「年越しそば」いつ食べる?タイミングや地域による違い・由来や縁起を解説!

「年越しそば」いつ食べる?タイミングや地域による違い・由来や縁起を解説!

もうすぐ年の瀬がやってきます。

年末の風物詩といえば、やはり大晦日に食べる「年越しそば」。

日本の伝統行事として親しまれていますが、「そばを食べるタイミングは?」「なぜそばを食べるの?」と聞かれて、「うちではこうなんだけど・・・正解は?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

実は、年越しそばには深い意味と由来があり、正しいタイミングで食べることで、一年の厄を払い、来年の幸せを願うことができる縁起物です。

この記事では、その由来や食べるべきベストタイミング、さらに地域によるユニークな風習も詳しくご紹介します。

この記事を読めば、年越しそばの奥深い意味に触れ、より特別な気持ちで大晦日を迎えられることでしょう。

1.年越しそばを食べるベストなタイミング

クリスマスが終われば、一気に年末。大掃除をして、年越しそばを食べて、初詣に行きおせち料理をいただく。

そんな年末年始の重要なイベントの一つである年越しそばですが、実に8割近くの人が年越しそばを食べる予定とのこと。
年越しそばを食べるかどうかについてのアンケート結果

出典:【トクバイ調査】2023年大晦日の食卓事情、年越しそばを食べる人は約8割!| 株式会社くふうカンパニーのプレスリリース

それでは、年越しそばをいつ食べるのがベストなのでしょうか。

1-1. 年越しそばをいつ食べる?

カレンダー

年越しそばを食べるのは、大晦日か元旦か。

このような家族で楽しむ側面の強い行事は、ご家庭それぞれのルールのようなものがあることが多い一方、他の人がどうしているのか知る機会はなかなかありません。

そこで、2023年に行われたアンケート結果を読み解いていきましょう。2024年のヒントになるかもしれません。

年越しそばをいつ食べるかについてのアンケート結果

出典:【トクバイ調査】2023年大晦日の食卓事情、年越しそばを食べる人は約8割!| 株式会社くふうカンパニーのプレスリリース

1-1-1. アンケートでは大晦日派が97%

アンケート調査では、実に97%という大多数の人が大晦日に年越しそばを食べると回答しています。

一方、少数派ではありますが、「元旦そば」として年が明けてから食べる人もいらっしゃるようです。

元旦にそばを食べるという文化は、地域としては福島県会津地方の一部に根付いています。

1-1-2. 年越しそばにどんな思いを込めるのか次第

年越しそばを食べる理由として、「厄落とし」がよく知られています。

つまり、切れやすいそばを食べることで「一年間の災厄を断ち切る」というゲン担ぎの意味合いです。

このように、年越しそばには厄落としの意味合いが広く浸透していることもあり、一年の終わりに縁起の良いそばを食べて気持ち新たに年を迎えようという方が多くいらっしゃるのかもしれません。

1-2. 年越しそばを食べる時間帯は?

時計

年越しそばを食べるタイミングとして、大晦日が一般的であることがわかりましたが、一日のうち、いつ食べるとよいのでしょう。

1-1-1. 特に決まりはない

年越しそばの意味合いから、特に食べるとよいとされる時間帯はありません。

大掃除やおせち料理の準備など、何かと忙しい大晦日ですから、ご家庭によって都合のよいタイミングでいただきましょう。

1-1-2. 夕食・夕食後に食べる人が大多数

先ほどのアンケート結果によると、「大晦日の夕食として食べる」が59.6%、「大晦日の夕食後、除夜の鐘を聞くころに食べる」が31.6%。

年越しそばを食べる予定の人のうち、およそ9割の人が夕方もしくは夜に食べると回答しています。

1-3. 【番外編】節分そばとは?

節分そばは、節分の日に清めのそばを食べて立春を迎える風習で、江戸時代から健康や縁起を担ぐ食べ物として親しまれてきました。

立春の前日の節分は、冬から春への節目の日で、江戸時代には節分を「本当の年越し」と考え、この日に食べるそばを「年越しそば」と呼ぶこともありました。

現在では「節分そば」は「年越しそば」と区別され、長野県や島根県をはじめとする地域で大切に受け継がれています。

2.年越しそばのはじまりと由来

2-1. 年越しそばを食べ始めたのはいつから?

江戸時代にそばを食べる人のイラスト

2-1-1. 江戸時代に生まれた風習

年末の定番である「年越しそば」の起源は江戸時代中期にまで遡り、広く一般に食べられるようになるのは明治以降とされています。

諸説ありますが、この風習は、当時の大阪の商家で始まったといわれています。

商家では忙しい月末、特に大晦日にかけて働いてくれた奉公人への感謝を込め、「三十日(みそか)そば」と呼ばれるそばを振る舞っていました。この「三十日そば」が、現在の「年越しそば」の原型であるとされています。

江戸時代には、そばの実が栄養価の高さから脚気(かっけ)の予防に効果があると知られており、そばは健康食としても重宝されていました。

また、そばは「ハレの日」の縁起物としても親しまれ、商家では毎月末にそばを食べる「晦日(みそか)そば」という習慣が広まっていました。この晦日そばには、その月の厄を払い、新しい月を無事に迎える願いが込められていました。

こうした月末のそばを食べる風習が、大晦日には特別な意味を持つようになり、年越しの風習の一環として定着したと考えられています。

2-1-2. 別名「みそかそば」「つごもりそば」

「年越しそば」には、「晦日(みそか)そば」や「つごもりそば」といった別名があり、これらは旧暦に由来しています。

旧暦では、月の満ち欠けに基づいて暦が作られており、月が完全に隠れる30日目を「晦(みそか)」と呼んでいました。この「晦」の言葉は新暦が採用された後も使われ続け、31日で終わる月を含む月末全般を「晦日」と呼ぶようになりました。一方、「つごもり」という言葉は「月隠り(つきごもり)」に由来し、同様に月末を意味します。

これらの名前が表すように、「晦日そば」や「つごもりそば」は、月末を締めくくる特別な食事として親しまれ、年末には特に重要な意味を持つようになり、「年越しそば」という形で現代まで受け継がれています。

2-2. どんな由来がある?

年越しにそばが食べられるようになった由来は諸説あり、込められた思いは様々です。

ここでは、そばの歴史に詳しい「蕎麦史考」の資料を参考に紐解きます。

2-2-1.  厄落とし

そばは他の麺類に比べて「切れやすい」ということから、「一年間の災厄を断ち切る」というゲン担ぎの意味合いがあります。そのため、「縁切りそば」と呼ばれることもあります。

大晦日にそばを食べることで、清らかな気持ちで新年を迎える準備を整えるという思いが込められています。

この「厄落とし」の意味合いで年越しそばを食べたいという方は、年をまたがずに、大晦日のうちに食べるようにしましょう。

地方によっては、他にも似たような意味合いで、一年中の借金を打ち切る意味で「借銭切り」(岡山県賀陽町)、「勘定そば」(福島県磐城)といい、必ず残さずに食べなければならないとされます。

2-2-2. 長寿祈願

そばの形状、つまり細く長い形が長寿につながり、年越しそばは健康で長生きすることを願う象徴ともされています。

このことから、年越しそばのことを「長寿そば」「のびそば」と呼ぶところもあります。

2-2-3. 金運上昇

金銀細工師たちが金粉を集める際にそば粉を使用していたことから、そばは「金を集める」縁起物とされるようになったという説があります。

また、金箔を延ばす作業の際、台をそば粉で拭うと金箔が美しく伸びることから、そばには「金を延ばす=財運を広げる」意味合いも付け加えられました。

これらの背景から、そばは金運上昇の象徴として扱われるようになりました。

ちなみに、当初は大晦日にそば粉で作った団子を食べる習慣が一般的でしたが、次第に現在のようにそばそのものを食べる形式に変化していったとされています。

2-2-4. 運気上昇

鎌倉時代に宋から博多に来た貿易商である謝国明が承天寺で、貧しさから年を越せない人々に「世直しそば」と呼ばれるそば餅を振る舞ったという逸話があります。
このそば餅を食べた人々に翌年から幸運が訪れたことがきっかけで、大晦日にそばを食べる風習が生まれたともいわれています。
この話に由来して、そばは「運そば」や「運気そば」、「福そば」とも呼ばれることがあります。

2-2-5. 「捲土重来」を期す

そばは、雨風にさらされても翌日には再び元気に立ち直ることから、「捲土重来」の象徴とされています。

「捲土重来」とは、一度失敗した者が再び力強く立ち上がり挑戦することを意味します。この特性から、そばは「来年こそは成功を」という願いや、「健康」を祈る縁起物として大晦日に食べられてきました。

風雨で倒れても太陽の光を浴びればまた立ち直るそばの姿が、新たなスタートを切るための希望を象徴しているのです。

3.地域ごとの年越しそば文化

「年越しそば」と一口に言っても、地域ごとに特色があります。

特に、年越しそばを大晦日に食べるのが全国的にも多数派ではあるものの、会津地方の「元旦そば」・新潟県一部地域の「十四日そば」・香川県の「年明けうどん」など、地域によっては年明けに食べるところもありますので、具体的に見ていきましょう。

3-1. 北海道

にしんそば出典:ニシン蕎麦 北海道 | うちの郷土料理:農林水産省

北海道では、年越しそばとして「にしんそば」を食べる家庭が多く、名産の身欠きにしんを甘露煮にしてそばにのせるのが特徴です。

にしんそばの発祥地とされる京都では薄口醤油を使われるのに対し、北海道では濃口醤油でほのかに甘い味付けをします。北海道の郷土料理として昔から親しまれてきました。

にしんには「二親」という漢字が当てられ、多くの子ども(数の子)を残すことから、子孫繁栄の象徴とされています。また、「春告魚(はるつげうお)」という別名を持ち、春の訪れを知らせる縁起の良い魚としても親しまれています。

3-2. 東北地方

わんこそば

東北で特色のある年越しそばとして有名なのは、岩手県の郷土料理「わんこそば」が挙げられます。

「大晦日に年齢と同じ杯数のわんこそばを食べると長生きできる」という言い伝えもあります。

3-1-1. 元旦そば(会津地方)

福島県会津地方の一部では、大晦日にそばを食べるのではなく、新年を迎えた元旦に「元旦そば」を食べる独特の風習があります。

この背景には、「元日そば、二日もち、三日とろろ」という言葉があり、元旦にはそば、2日目にはお餅、3日目にはとろろを食べることで新年の健康と豊作を祈る文化があるからです。

そばの細く長い形状が長寿を象徴し、新年最初の食事として家族で味わうことで、幸せな一年を願います。現在でもこの風習は多くの家庭で受け継がれ、会津ならではの特別な文化として親しまれています。

3-3. 関東地方

関東地方の年越しそばは、濃いめの醤油味が特徴的なつゆと、コシのある細めのそばが主流です。

関東のそばはシンプルに「かけそば」が定番ではありますが、年越しそばの具材として全国的に人気な「海老の天ぷら」もよく用いられます。

海老は、”腰が曲がるまで”という長寿の象徴であり、ゆでた後は赤くなるためおめでたい食べ物ともされています。

3-4. 中部地方

越前おろしそば出典:おろしそば 福井県 | うちの郷土料理:農林水産省

中部地方の中でも、福井県では、年越しそばとして越前おろしそばが食べられることが多いです。

辛味のある大根おろしをそばにつゆとともにかけるのが特徴で、大根の風味がそばの味を引き立てます。さっぱりとした味わいながらも満足感があり、年末のご馳走として地元で親しまれています。

へぎそば出典:へぎそば 新潟県 | うちの郷土料理:農林水産省

他にも、年越しそばとして新潟県で食べられることが多いのが、「へぎそば」。

布海苔(ふのり)をつなぎに使った滑らかな食感と独特のコシが特徴で、冷水で締められたそばを四角い「へぎ」と呼ばれる器に一口ずつ盛り付けた見た目の美しさも魅力です。

3-4-1. 十四日そば(新潟県)

十四日そばは、新潟県の一部地域で行われる習慣で、1月14日に無病息災を願って食べるそばです。

大晦日近くまで農繁期が続いた地方で、1月15日の小正月を本正月として、前日の14日に年越しそばを食べる習わしがあったことに由来しています。

3-5. 関西地方

関西地方の年越しそばは、一般的にあっさりとした味付けが特徴です。

特に、昆布やかつおで取っただしを使い、関東に比べて比較的薄味のつゆで楽しむことが多いです。

そばの具材としては、全国的に人気な海老天の他、特に京都を中心に、にしんそばの具の定番です。他にも天かすやネギをトッピングすることが一般的で、家庭ごとにさまざまなアレンジが加わることもあります。

ネギは、”一年の労を「ねぎ」らう”の語呂合わせもあったりします。

3-6. 中国・四国地方

島根の釜揚げそば出典:出雲そば 本田屋

中国地方では、島根県において年越しそばとして釜揚げそばが食べられることが特徴です。

釜揚げそばは、釜から茹で上げたそばをそのままゆで汁と一緒にお椀に入れたシンプルなもので、甘辛いつゆをかけて食べるのがこの地域の食べ方です。

3-6-1. 年明けうどん

年明けうどん

出典:年明けうどん

香川県では、年越しそばではなく「年明けうどん」といううどん県ならではのものがあります。

元旦から1月15日までの間に、紅い具材をのせたうどんを食べることで、新年の幸福や健康を祈るというものです。うどんは、太くて長いことから、古来より長寿を祈る縁起物として食べられてきました。「年明けうどん」は、純白で清楚なうどんを年の初めに食べることにより、その年の人々の幸せを願います。

2008年頃からさぬきうどん振興協議会によって提唱されたうどん業界のPRの要素が強く、いわゆる年越しそばやおせち料理といった日本の伝統文化とは少し異なります。

3-7. 九州・沖縄地方

沖縄のソースそば

福岡市博多区では、大晦日に食べるそばを「運そば」と呼び、幸運を呼び込む食べ物とされています。この風習は、鎌倉時代に商人・謝国明が飢餓や疫病で苦しむ博多の人々にそばを振る舞った故事に由来します。
一方、沖縄では「そば」といえば「沖縄そば」を指すのが一般的で、年越しには「ソーキそば」など、地元に根付いた沖縄そばを食べる習慣があります。

まとめ

年越しそばは、江戸時代にその起源をもつ、日本の年末年始に欠かせない伝統行事の一つです。

年越しそばを食べるタイミングは、アンケート調査によると「大晦日」が多数派でした。大晦日のうち、夕食として、もしくは夕食後に除夜の鐘を聞くころという方が多いようです。

年越しそばは細く切れやすいことから「厄落とし」の意味合いが広く知られていますが、この思いを込めるのであれば、大晦日のうちに食べるとよいでしょう。

他にも、年越しそばの由来は、長寿祈願・金運上昇・運気上昇など縁起のよいものが多いです。

年越しそばを食べるタイミングは特に決まりはありませんので、それぞれのご家庭の大晦日の過ごし方にあったタイミングでいただき、清らかな気持ちで新年を迎えられるとよいでしょう。

<参考資料>
飯倉晴武編「新装版 日本人のしきたり」2003年、青春出版社
新谷尚紀編「日本の『行事』と『食』のしきたり」2004年、青春出版社
永山久夫「日本人の「食」、その知恵としきたり」2014年、海竜社
新島繁「蕎麦史考」1975年

よくある質問

[質問]年越しそばはいつ食べるのが良いですか?
[回答]一般的には大晦日に食べる人が多く、アンケートでは97%の人が大晦日に食べると答えています。
[質問]年越しそばを食べる意味は何ですか?
[回答]年越しそばには、厄落としや長寿祈願、金運上昇などの縁起の良い意味が込められています。
[質問]地域によって年越しそばの文化は違いますか?
[回答]地域によって異なり、福島県会津地方では「元旦そば」、香川県では「年明けうどん」が食べられるなど特徴があります。

 

 

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