更新日:令和6年1月5日
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1.「春の七草」とは?
七草粥の「七草」とは、一般に「春の七草」と呼ばれるものです。それでは七草とは、具体的に何と何を差すのでしょうか。
答えは、「せり・なずな・ごぎょう・はこべら・ほとけのざ・すずな・すずしろ」の7種類をいいます。
その歴史や種類の変遷には諸説ありますが、平安時代に書かれた「河海抄(かかいしょう)」(四辻善成による『源氏物語』の注釈書)の「せり・なずな・ごぎょう・はこべら・ほとけのざ・すずな・すずしろ、これぞ七種」との記述があり、これが由来のひとつといわれています。
ここでは、七草それぞれについて詳しく解説していきます。
1-1. せり(芹)
日あたりのよい水辺や渓流で見られる多年草で、食べると香りが強く歯触りもさわやかなのが特徴です。
せりは、葉が競い合うように育っていくその様から「競り勝つ」という意味が込められた縁起物ともされています。
免疫力を高めて風邪を予防するビタミンA、疲労回復に効くビタミンB群、疲労回復を手助けするビタミンC。さらには鉄分も多く含まれているため、冷え性や貧血の症状を和らげる働きもあります。
1-2. なずな(薺)
アブラナ科の年越草。畑や道端などで見かけるなずなですが、別名である「ぺんぺん草」の方が馴染みがあるかもしれません。
こちらも、「撫でて汚れを払う」という意味が込められた縁起の良いものとされています。
せりと同様に、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、鉄分、さらには亜鉛などが含まれています。
1-3. ごぎょう(御行)
キク科の越年草で、別名ハハコグサ(母子草)ともいいます。日あたりのよい田んぼや道端によく自生しています。
白い産毛のようなもので覆われたこのごぎょうは、「仏様の体」を表すとされます。
実は詳しい成分がわかっていないこのキク科の植物ですが、咳や喉の痛みを和らげる作用があるといわれています。
1-4. はこべら(繁縷)
道端や畑などに生えるナデシコ科の野草。秋に発芽して越冬します。
「繁栄がはびこる」という意味を持つ大変縁起の良い野草です。
タンパク質が比較的多く含まれ、ミネラルをはじめとした栄養に富んでいます。
1-5. ほとけのざ(仏の座)
本来のほとけのざはシソ科の植物ですが食用には向きません。春の七草として挙げられるほとけのざは、実は「こおにたびらこ(小鬼田平子)」というキク科の別種の野草です。湿地を好む野草ですので、田んぼでよく見られます。
その名が示す通り、「仏さまの座る場所」を意味する縁起ものです。
高血圧の予防にも役立つだけでなく、食物繊維が豊富ですので、胃腸の働きを整えます。
1-6. すずな(鈴菜)
すずなとは、実はカブのことです。白くて丸い根菜の部分は冬が旬ですが、その葉部分もおいしくいただけます。
すずなの名前には、「神さまを呼ぶ鈴」という意味があるといわれています。
胃腸の消化を助けるアミラーゼ、免疫力を高めるビタミンC、むくみを解消するカリウムが含まれています。
1-7. すずしろ(蘿蔔)
すずしろとは、大根の古い呼び名です。
すずしろは、「清白」とも書き、「汚れなき純白」の意味があります。
スズナ同様の効果だけでなく、食物繊維も豊富で便秘の解消にも効果があります。
2.七草粥を食べる意味は?
2-1. 無病息災を願う
若草は、春の生命の象徴です。植物がもつ生命力を取り入れ、1年の無病息災を祈るという意味があります。昔はこの生命力あふれる七草粥を食べると、邪気を払い万病を防ぐことができると信じられていました。
2-2. 胃腸を休める
お粥は消化が良く、胃腸に優しい食べ物です。お正月のごちそうやお酒で弱った胃腸を休めるにはぴったりです。
2-3. ビタミンを補う
現在では一年中いつでも豊富に野菜が手に入りますが、昔は冬に生産野菜を手に入れることは大変難しいことでした。そのため、冬に不足しがちなビタミンを子の七草から補うという意味がありました。
3.七草粥はいつ食べる?
3-1. 毎年1月7日
七草粥は、1月7日にいただきます。2025年の1月7日は火曜日です。平日ですが、お時間がある方は、是非七草粥に挑戦してみましょう。
七草粥を1月7日に食べるしきたりは、日本の「若菜摘み」の風習と、中国の「人日の日」の二つの風習が合わさったものと考えられています。
また「人日の日」とは、季節の節目になる日である「五節句」の一つです。
五節句とは、以下の通りです。
・「人日の節句(七草の節句)」(1月7日)
・「上巳の節句(桃の節句)」 (3月3日)
・「端午の節句(菖蒲の節句)」(5月5日)
・「七夕の節句(笹竹の節句)」(7月7日)
・「重陽の節句(菊の節句)」 (9月9日)
ひなまつり、子どもの日、七夕はみなさん色々とお祝いをされることかと思いますが、七草粥をいただくのもこれらに並ぶ大切な風習です。
3-2. 朝・昼・夜いつ食べても大丈夫
七草粥は、1月7日の朝・昼・夜のいつ食べても大丈夫です。お好みにあわせていただきましょう。
ちなみに、少し歴史をのぞいてみると・・・
小正月という、農耕に大切な15日を迎える準備の日でもあった1月7日。まずは前日6日の夜に、七種の道具(火箸・擂り粉木・卸し金・杓子・割薪・菜箸・火吹竹)を並べてまな板を7回たたき、若菜を包丁で刻みます。
豊作と平穏を祈る「鳥追いの予祝行事」と結びついた風習とされますが、若菜を刻む際には「七草なずな、唐土の鳥が日本の土地に渡らぬ先に、合わせてバタバタ」と7回唱えたといわれています。この若菜を神前にお供えし、翌7日朝に下げて、お粥に入れて食べたという説があります。
4.七草粥を食べる風習はいつから?
4-1. 平安時代は7種類の穀物粥を食べていた
七草粥は平安時代に日本に伝わり、当初は7種類の穀物から作られる「七種粥」という粥を小正月(十五日)に食べていました。
七種粥には米・粟(あわ)・黍(きび)・稗(ひえ)・蓑(みの)・胡麻・小豆の7種類の穀物が使われていました。
4-2. 日本の「若菜摘み」と中国の「人日の日」の風習が融合
1月7日に七草粥を食べるという風習は、日本の「若菜摘み」と中国の「人日の日」の風習が融合したものと考えられています。
日本では昔から「若菜摘み」といって、野山に出かけては若菜を摘み集めて食べていました。若草の生命力を取り入れて新しく若々しい命を保つと考えられていたからです。
一方、古来の中国では、正月1日を「鶏の日」、2日を「狗の日」、3日を「猪の日」、4日を「羊の日」、5日を「牛の日」、6日を「馬の日」とし、そして7日を「人の日」として、それぞれの日にその動物を殺さないようにしていました。「人の日」には、犯罪者に対する処罰を行わないことになっていました。
7種類の野菜を入れとろみをつけた汁物を無病息災や、立身出世を祈って食べていました。
この「若菜摘み」と「人日の日」が結びつき、1月7日に七草を食べるようになったと考えらえています。
4-3. 平安末期~鎌倉時代には現在と同じ七草に
平安時代末期の書物に「七草」の記述があるほか、鎌倉時代の史料には邪気を除くために7日に七種の草を入れた羹(あつもの=野菜などを入れた熱い吸い物)を食べていたと記述があります。
そのため、平安時代末期から鎌倉時代には、粥に入れる七草は現在と同じ7種類であったと考えられています。
4-4. 江戸時代には幕府の公式行事に
人日と若菜摘みが融合し、1月7日に粥を食べるという習慣が確立されてきましたが、江戸時代にはこれを幕府の公式行事として、人日の日には将軍以下が七草粥を食べて祝いをしました。
5.七草粥の簡単レシピ
5-1. 新鮮な七草を使って
・水 500ml
・七草 市販品1パック
・お湯 (ゆで用)適量
・塩少々
<出典> 優しい味わい 七草粥 作り方・レシピ | クラシル 動画付きでわかりやすいので是非ご覧ください。 |
5-2. フリーズドライの七草を使って
七草がフリーズドライになった状態で販売されているので、お粥を作って混ぜるだけという方法もあります。
(出典:Amazon | フリーズドライ春の桜七草 | こだま食品株式会社 | 乾燥野菜 通販)
6.七草粥はいつから食べられる?
6-1. 離乳中期以降が目安
おおよその話でいえば、七草粥はお米と野菜(葉物)ですので、赤ちゃんが食べられないものではありません。
しかし、お粥の固さは大人向けと同じではなく、月齢に合わせて、普段与えているお粥の柔らかさで作ってあげましょう。
6-2. 七草は月齢に応じて工夫を
七草は栄養が豊富でそれ自体赤ちゃんに害があるということはありませんが、種類によっては少し苦みがあったりするものがあります。
一般的には、せりやすずしろ(大根の葉)は青菜独特の苦みがあるので、何か他のものに代用してもいいかもしれません。
無理に七草全種類を食べさせる必要はありません。七草にこだわりすぎず、ほうれん草や小松菜・ブロッコリーなど、緑の葉物を何か1種類お粥に混ぜるだけでも、十分「七草粥」の雰囲気を楽しめることかと思います。
>>>離乳食の七草粥に関するレシピ紹介 【管理栄養士監修】離乳食の七草粥|レシピ、セットは使える? | MAMADAYS(ママデイズ) だいこんと青菜のおかゆ(春の七草風離乳食) | 母子栄養協会 |
7.地方による違いはどんなものがあるの?
7-1. 山形県の【納豆汁】
山形県では、食料が不足する寒い冬を乗り越えるための保存食として、納豆を自家製で作っているところが多くありました。納豆汁は、この自家製の納豆をすり鉢でていねいにすりおろしてとろみを出し、味噌味に仕立てた山形の冬の家庭料理です。
この納豆汁に欠かせないのが、芋の茎を干した「いもがら」。その他、タンパク源を豊富に含む豆腐、厚揚げ、そしてコンニャク、キノコ、山菜などを入れて作ります。
納豆のとろみで冷めにくく、体が温まる料理です。雪深い地域では正月に七草を準備することができなかったため、保存食を利用してつくるこの納豆汁を食べて1年の無病息災を願う風習があります。
食べる時期は地域によって様々ですが、村山地域では七草の時期に、最上地域では正月に、そして庄内地域では「大黒様のお歳夜(おとしや、12月9日の大黒様が妻を迎える夜)」などに食べられることがあるそうです。
7-2. 青森県【けの汁】
出典:けの汁 青森県 | うちの郷土料理:農林水産省 (maff.go.jp)
小正月に一年の無病息災を願っていただく精進料理で「津軽の七草がゆ」とも呼ばれます。津軽の方言で「粥(かゆ)」を「け」と呼ぶことから「かゆの汁」とされるなど、由来は諸説あります。
お米は入っておらず、大根・にんじん・油揚げ、こんにゃくなどの根菜や大豆製品を昆布だしで煮込んだ汁物です。地域によって具材は様々ですが、7種類にまとめる点は共通しています。
具材が細かくさいの目に刻まれているのは、米が貴重だった時代に刻んだ具材を米に見立てて食べていた名残といわれています。
もともとは小正月の料理で、お正月がひと段落して嫁が小正月に里帰りする際、男衆のためにつくりおきした保存食でもあります。家に残った男衆たちは、温めなおして何日も食べたといいます。温めなおすほど具材のうまみが出ておいしくなるそうです。
8. 夏・秋・冬の七草は?
8-1. 夏の七草
春の七草のように古くから定着したものではありませんが、七草はそれぞれの季節にあります。
夏の七草の種類には二つの説があり
まず一つ目が、昭和の初め頃に、明治生まれの教育者であり政治家である歓修寺経雄(がしゅうじつねお)が詠んだ和歌より選ばれた、
・葦(よし)
・藺(い・い草のこと)
・沢瀉(おもだか)
・未草(ひつじぐさ)
・蓮 (はちす・ハスのこと)
・河骨(こうほね)
・鷺草(さぎそう)
です。これらの七草は観賞用のですので、食べることはできません。いずれも水辺や湿地に咲く花たちなので、日本の暑い夏に涼しさを感じさせてくれます。
また、第二次世界大戦中、日本学術振興会学術部・野生植物活用研究小委員会が選定した夏の七草には、
・藜(あかざ)
・猪子鎚(いのこづち)
・莧(ひゆ)
・滑莧(すべりひゆ)
・白詰草(しろつめくさ)
・姫女菀(ひめじょおん)
・露草(つゆくさ)
があります。
時は1945年6月。戦争が終わりに近づき、食べ物がなく食料の確保に苦労し、多くの人がお腹を空かせていたころでしょう。
とにかくなにか食べるものを・・・とのことから、空襲跡の荒れ野原でもたくましく生え、人々が食べられる植物として発表されたのが夏の七草です。
8-2. 秋の七草
秋の七草は、万葉集(759年、現存する最古の和歌集)に収録されている山上憶良が詠んだ歌が由来と言われています。
それによると、秋の七草は
・萩(はぎ)
・薄(すすき)
・桔梗(ききょう)
・撫子(なでしこ)
・葛(くず)
・藤袴(ふじばかま)
・女郎花(おみなえし)
8-3. 冬の七草
寒さが厳しい冬は、ほかの季節とは少し違う“七草”がいくつかあります。
一つは、冬が旬の野菜、つまり
・葱
・白菜
・大根
・春菊
・ほうれん草
・キャベツ
・小松菜
体を温める効果がある冬野菜たちを七草と呼ぶことがあります。
もう一つは、明治41年に久田二葉によって書かれた「園芸十二ヶ月」によると、「植物学者伊藤篤太郎博士が、先年冬の七草を選定した」との記述があります。それによると、冬の七草とは、
・款冬の薹(ふきのとう)
・福寿草(ふくじゅそう)
・節分草(せつぶんそう)
・雪割草(ゆきわりそう)
・寒葵(かんあおい)
・寒菊(かんぎく)
・水仙(すいせん)の七つと言われています。いずれも観賞用です。
最後に、冬の“七種”と書いて当時のころに食べる縁起のいい食材があります。
・なんきん(かぼちゃ)
・にんじん
・れんこん
・かんてん
・ぎんなん
・きんかん
・うどん(うんどん)
これらの食べ物はその名前に「ん」がたくさんつくことから、「運(=ん)盛り」として縁起のいい食べ物とされています。
9.まとめ
七草がゆを食べるという風習は、日本から古く伝わる大切な節句の風習です。
七草粥は、1月7日にいただきましょう。朝・昼・夜はいつでも結構です。七草はスーパーで簡単に手に入り、作り方も難しくありません。
春の七草に込められた縁起のよい意味を知って、「今年は七草粥を作って食べよう!」という方もいらっしゃることでしょう。是非、七草粥を食べてご家族の1年の無病息災をお祈りください。
<参考資料>
生方徹夫(2021)「日本の祝日と祭事の由来」精文堂印刷株式会社
納豆汁 山形県 | うちの郷土料理:農林水産省 (maff.go.jp)
けの汁 青森県 | うちの郷土料理:農林水産省 (maff.go.jp)
[質問]七草粥はいつ食べますか? |
[回答]七草粥は、毎年1月7日にいただきます。朝・昼・夕はいつでも構いません。 |
[質問]七草粥を食べる意味を教えてください。 |
[回答]一つに、若菜の生命力をいただき1年の無病息災を願います。また、お粥は消化がよく胃腸に優しいのでお正月で疲れた胃を休ませてくれます。そして最後に、冬に不足しがちな野菜のビタミンを補ってくれます。 |
[質問]七草粥の「七草」とは何ですか? |
[回答]七草粥に入れる「せり・なずな・ごぎょう・はこべら・ほとけのざ・すずな・すずしろ」の七種類をいいます。 |