産泰神社 安産祈願

安産祈願や神社のことについて、神職が綴ります。

このはな手帖

【神職がお答えします】喪中に初詣に行ってもいいの?鳥居をくぐってはいけない!?

【神職がお答えします】喪中に初詣に行ってもいいの?鳥居をくぐってはいけない!?

お正月には社寺に初詣に行かれる方が多くいらっしゃいます。一方で、前の年に家族や親戚に不幸があった場合、初詣に行ってもいいのかと悩んでしまうのではないでしょうか。

新年のお祝いの言葉や、年賀状を送ることを控えた方がいいというのはよく聞くかと思いますが、

初詣については「お寺ならいいの?」「鳥居をくぐらなければ神社も参拝してもいいの?」など、様々な疑問が浮かびます。

ここでは、忌中・喪中の初詣について詳しく解説します。

行ってもいいの?行ってはいけないの?の疑問を解消し、すっきりとした気持ちで新しい年を迎えましょう。

更新日:令和6年4月17日

INDEX

1.初詣とは?

1-1. 年が明けて初めて社寺に参拝する行事

初詣とは、年が明けて初めて神社やお寺などに参拝をする行事のことです。

一年の感謝の気持ちを伝え、新年を無事に過ごせることを祈ります。

正月三が日に初詣に出かける人の数は、なんと延べ1億人といわれています。

2009年以降、警視庁が発表を取り止めましたが、社寺の発表などを含めた推計値によると、2018年には、明治神宮(東京都)、川崎大師(神奈川県)、成田山新勝寺(千葉県)といった関東の有名社寺への初詣参拝客はいずれも300万人を超えるほどです。

多くの日本人が、初詣に足を運んでいることがわかります。

1-2. 家長が祈願のために氏神神社で行う「年籠り」が起源

初詣の起源は、平安時代に行われていた「年籠り(としごもり)」という習慣といわれています。

その地域の氏神様(うじがみさま)が祀られている神社に、村や家長が大晦日の夜から元旦の朝まで寝ずに籠ることをいいます。

年籠りは、やがて大晦日の夜の「除夜詣」と元旦の朝の「元旦詣」の二つに分かれ、元旦詣が現在の初詣の原型であるとされています。

元旦の朝に神社に参拝をすることが習慣化したのは、明治中期とそれほど古い時代ではありません。

参拝先については、江戸時代末期までは近所の氏神神社や、居住地から見て恵方にあたる神社でした。

恵方とは、その年の福徳をつかさどる神様「歳徳神(としとくじん)」がいる縁起のいい方向のことです。恵方にあたる神社への参拝を、恵方詣ともいいます。

1-3. 鉄道網の発展により遠方の有名社寺への参拝可能に

お正月の参拝は、鉄道の発展に深くかかわりがあります。

鉄道の発展前は東京(江戸)市民の参拝先は市内に限られていましたが、1872年(明治5年)に東海道線が開通したことにより、従来から信仰のあった神奈川県の川崎大師に行くことが容易になりました。

他にも、京成電鉄や京浜急行電鉄、成田鉄道の登場により、千葉県の成田山新勝寺へのアクセスも可能になりました。

年ごとに変わる恵方詣に対し、遠方の有名神社への参拝も可能になった大正時代以降は「初詣」という言葉が主に使われるようになったといいます

2.忌中・喪中とは?

お葬式のお花

「忌中」と「喪中」、とても似た言葉ですが、示す期間と意味合いが異なります。

昔は、法律で間柄によって喪中期間が定められていました。今では法律ではなく、地域の風習によって決まっているところもあります。

ここでは、忌中・喪中にどのような違いがあるのか詳しく解説します。

忌中と喪中の期間

2-1. 忌中とは、外部との接触を避ける期間

2-1-1. 神道における忌中(50日間)

神道式のお供え

神道における忌中を知るうえで重要な概念は、次の2点です。

・祖先を崇拝する信仰が基になっていること
・「死は穢れたもの」であるということ

神道における「忌中」とは、故人の祀りに専念する期間である50日間のことを指します。

同時に、近親者の死という穢れを外に広めないように、忌中は外部との接触を避けて身を慎みます。

故人の死後50日に行われる五十日祭(ごじゅうにちさい)により、故人は家庭を守る祖先神になると考えられています。

2-1-2. 仏教における忌中(49日間)

物資期のお供えであるお線香

仏教において、「死は生の苦しみから解放され、別の世界へと生まれ変わるための通過点」として考えられています。

故人は生まれ変わるために7日ごとに生前の行いについて裁きを受け、7回目(49日目)の最後の裁判で極楽浄土へ行けるか否かの判断をされます。

四十九日とは仏教用語の一つで、命日から数えて49日目に行う追善供養のことです。

ちなみに、鎌倉時代・親鸞によって開かれた日本仏教の宗派の一つである浄土真宗には、忌中の概念がありません。

浄土真宗では、阿弥陀如来の力を信じて「南無阿弥陀仏」と念仏すればすべての人は極楽浄土に往生できるという教えであるからです。

つまり、死後すぐに阿弥陀如来の力により極楽浄土で仏様として生まれ変わるので、死後49日の忌中の考え方がないのです。

2-2. 喪中とは、故人を偲び悲しみを乗り越えるための期間

喪中は、残された家族が悲しみを乗り越え、通常の生活に戻るために必要な期間とされています。

結婚式などのお祝い事のへの出席、遠方への旅行などは控えることとされています。

2-3. 喪中の範囲は故人の二親等までが一般的

喪に服す期間は故人との関係によって異なりますが、一般的には二親等までの家族がその範囲とされます。

自分(夫・妻)を基準として、

一親等  |  自分の父母・配偶者の父母・子
二親等  |(自分および配偶者の)兄弟姉妹・兄弟姉妹の配偶者・祖父母、孫

3.喪中、神社への初詣はどうしたらいい?

神社のお祓い

親族が亡くなったとき、身内の者は喪に服しますが、このことを「服忌」といいます。

「忌」とは個人のお祀りに専念する期間、「服」は故人への哀悼の気持ちを示す期間のことです。

地域によって慣例がある場合は、その慣例に従いましょう。特に慣例がない場合は、五十日祭までが忌中、一年祭までを喪中とするのが一般的です。

ここでは、喪中の間にお正月を迎える場合、初詣に行ってもいいのかどうか、について解説します。

3-1. 忌中(五十日祭前)は控えましょう

喪中と忌中の神社への参拝

忌中は、神社への参拝を遠慮するのがよいでしょう。

神道では「死は穢れたもの」と考えられているため、神様をお祀りする神聖な場所である神社への参拝は、控えるのがよいとされています。

また、「穢れ」=「気枯れ」と表し、親族を亡くして気力を失っている状態を示すことがあります。

忌中に神社へのお参りを控える理由として、この「気枯れ」を神社に持ち込まないようにという考えもあります。

忌中にどうしても参拝をしたい場合は、お祓いを受けてからであればよいとする神社もありますので、神社に相談してみましょう。

3-2. 忌中を過ぎれば、喪中でも初詣に行っても大丈夫

神社庁のWEBサイトによると、

忌中を過ぎれば、原則として神事を再開しても差し支えないと考えられています
(出典:服忌 | 神社本庁 (jinjahoncho.or.jp))。

とあります。
したがって、忌中を終えていれば、初詣に行っても問題ありません。

3-3. 「忌中の初詣でも鳥居をくぐらなければいい」は間違い

「忌中に鳥居をくぐってはいけない」が転じて、「鳥居をくぐらなければ神社に行ってもいい」と解釈するのは、間違いです。

ここでの「鳥居をくぐる」とは「神社への参拝」を表現したものですが、忌中は基本的には神社への参拝は控えましょう。

4.喪中、お寺への初詣はどうしたらいい?

お寺

4-1. 忌中期間(四十九日前)でも問題なし

仏教には、神道と違って「穢れ」という概念がないため、忌中であってもお寺への初詣は問題ありません。

5.(忌明け)喪中の初詣でやってもいい?の疑問

忌中は神社への参拝を控えますが、喪中の期間であれば神社にお参りに行くことは問題ありません。

ここでは、忌中が明けた後の喪中の初詣における疑問を解決します。

5-1. おみくじを引いても大丈夫です

おみくじ

忌中を過ぎていれば、おみくじを引くことは全く問題ありません。

5-2. 厄払いをしてもらっても問題なし

神社庁によると、基本的に、忌中が明ければ神事を再開してよいとされています。(出典:服忌 | 神社本庁 (jinjahoncho.or.jp))。

したがって、厄払いをしてもらっても問題ありません。

6.喪中のお正月の過ごし方は?

6-1. 正月飾りは控えるのが一般的

正月飾り

喪中のお正月には、正月飾りは控えるのがよいでしょう。

正月飾りは、歳神様を迎え入れ、旧年を無事に感謝し、新年をお祝いするためのものだからです。

以下の正月飾りについても同様です。

門松

歳神様をお迎えするために飾ります。

しめ飾り

しめ縄に橙(みかん)や譲り葉などの縁起物を飾り付けたものです。こちらも歳神様をお迎えする自宅が神聖であることを示すために飾ります。

鏡餅

神様のお供え物として飾ります。

喪中の間はお祝い事を自粛する必要がありますので、正月飾りは適切ではありません。

6-2. おせち料理は遠慮するのが通例

お正月のおせち料理

喪中の間は、おせち料理をはじめとするお正月の料理は遠慮するのが通例です。

というのも、お正月の料理はいずれも「祝い膳」と考えられているからです。

おせち料理

おせち料理は、作物の収穫に感謝して神様にお供えする「節供(せちく)」を料理していただく「節供料理」が由来とされています。

奈良時代には朝廷内の節供(祝いの日に行われる公式行事と宴会)でふるまわれていました。

中でも最も重要な正月の節供料理が、現在に伝わる「おせち料理」と呼ばれるようになったといわれています。

おせち料理といえば豪華なお重のイメージの通り、新年をお祝いする「祝い膳」です。

祝い肴三種である、煮しめ・酢の物・焼き物を基本とし、無病息災・子孫繁栄・五穀豊穣といった縁起のいい意味を込めた料理が並びます。
また、おせちの「組重」はめでたさを重ねるという意味が込められています。

お雑煮

彩り豊かなお雑煮。正月飾りの鏡餅に代表されるように、お餅は歳神様へのお供えです。旧年の収穫と家族の無事に対する感謝の気持ちを伝え、新年の方策と家内安全を祈ります。

お屠蘇

お屠蘇とは、お正月にいただく縁起のよいお酒のことです。

「邪気を屠(ほふ)り、魂を蘇らせる」や「蘇という悪鬼を屠る」といったいろいろな解釈があります。

祝箸

おせち料理をいただくときに使う祝箸は、片側は神様用・片側が人間用とされています。

このように、大変おめでたい意味のある料理ですので、喪中の間は遠慮するのが一般的です。

どうしてもおせち料理を食べたい、という方は、
・お重は使わない
・祝箸は使わない
・紅白のものを白だけにしたり、鯛など華美なものは避ける
・通常の食事としていただく

など、工夫してみてください。

また、地域や家庭によっては「忌明けであれば構わない」という考え方もあります。

おせち料理は家庭内のことですので、何よりも故人をしのぶ気持ちを第一に、家族の意向で決めてしまってもよいでしょう。

6-3. お年玉はお祝い事について書かれていないポチ袋を選ぶ

お祝い言葉のないポチ袋

お正月といえば、お年玉を楽しみにしているお子さまもたくさんいます。

喪中にお年玉を渡すことは問題ありませんが「あけましておめでとう」等、お祝いの言葉が書かれていないポチ袋を選ぶことをおすすめします。

6-4. お歳暮の贈答は問題ないが、熨斗に注意

お歳暮は、喪中に避けるべき慶事ではなく、あくまでも日ごろの感謝の気持ちを伝えるための贈り物ですので、問題ありません。

なお、お歳暮の熨斗(のし)はつけずに、シンプルな包装紙で送りましょう。

7.その他、忌中・喪中期間の注意点は?

7-1. 結婚式などの慶事は避けるのがマナー

7-1-1.  自身の結婚式

喪中とは、故人を故人を偲び悲しみを乗り越えるための期間です。

したがって、喪中の間はお祝い事を避けることが基本になります。

しかし、最近では忌中を過ぎ、両家どちらも納得していれば結婚式を行ってもいいと考える方もいます。喪の考え方は家のしきたりや地域によって様々です。

亡くなった側のご家族の意見を尊重しながら、両家でよく話し合って決めるのがよいでしょう。

7-1-2.  招待された結婚式への出席

昔からの一般的なマナーでいえば、忌中での結婚式の参加はマナー違反となります。

縁起のいい場所に「穢れ」のある状態で参加するのは避けるべきといわれていたためです。

しかし、時代も大きく変わり、現在は考え方も人それぞれです。

自分の気持ちの整理ができたうえで、相手から出席を熱望され自身も参列したいという思いがあれば、この限りではありません。

忌中明けであれば、基本的には結婚式に参加しても問題ないというのが近年の一般的な考え方です。

ただし、「喪中ですが」と一言相手に伝える気遣いは忘れないでおきましょう。

7-2. 贅沢や派手な行為も自重するのが一般的

厳密な決まりはありませんが、自主的に行動を慎むということがマナーです。

ご自身とご家族の考え方次第、ではありますが、贅沢な旅行や派手な行為は自重するのが一般的といえるでしょう。

7-3. 自宅の神棚には白布・半紙をかけましょう

神棚封じ

自宅に神棚がある場合、ご家族にご不幸があると神棚に半紙を貼り封印します。

これを「神棚封じ」といいます。

神道では、古くから「死は穢れ」と捉えられていますが、この穢れを神様に見せないようするための儀式です。

神棚封じの手順

1. 神棚の神様にご挨拶をしてから、誰が亡くなったのかを伝えます
2. 神棚にお供えしているお供え物や榊を下げます
3. 神棚の扉を閉め、白い半紙を使用して神棚が隠れるようにします
※しめ縄がある場合は、しめ縄の上から半紙を貼ります

忌中の50日間は神棚封じをしておきましょう。

五十日祭の後に忌明けとなりますので、塩で身を清めて拝礼をし、半紙をはがして普段と同じお供えをしましょう。

7-4. 何かあれば、家族にご相談を

忌中・喪中に控えるべきと考えることは、宗教や、地域・家のしきたりによって様々です。

何か気になることがあれば、まずは家族で相談しましょう。

まとめ

お正月に社寺にお参りする初詣。普段からあまり意識することではないので少し難しく感じられる方もいらっしゃるかもしれません。

初詣と喪中が重なってしまった場合、

・忌中(五十日祭まで)は神社への参拝は控える。
 忌明けであれば神社への参拝は問題なし。(神道の穢れの考えによる)

・お寺への初詣はいつでも大丈夫です。

喪中だけど初詣はどうしたらいいのだろう、
という疑問は解消できたでしょうか。

この記事を読んで、疑問をすっきりとさせ、お正月を迎えてくださいね。

<参考資料>

服忌 | 神社本庁 (jinjahoncho.or.jp)
神葬祭 – 東京都神社庁 (tokyo-jinjacho.or.jp)
初詣 人気&人出 ランキング 全国ベスト20 (tabi-mag.jp)
喪中や忌中に初詣は可能?お寺と神社でも違いはあるのか|村松山 虚空蔵堂だより (taraku.or.jp)

よくある質問

[質問]喪中ですが、初詣には行ってもいいですか?
[回答]忌明け(五十日祭を終えてけから)であれば、問題ありません。
[質問]喪中でも鳥居をくぐらなければ初詣に行ってもいいですか?
[回答]「忌中に鳥居をくぐってはいけない」が転じて、「鳥居をくぐらなければ神社に行ってもいい」と解釈するのは、間違いです。ここでの「鳥居をくぐる」とは「神社への参拝」を表現したものですが、忌中は基本的には神社への参拝は控えましょう。
[質問]今年祖父が亡くなりましたが、喪中になりますか?
[回答]一般的には二親等までの家族がその範囲とされますので、二親等である祖父が亡くなった場合は喪中とすることが多いです。ただし、喪に服す期間は故人との関係によって異なりますので、ご家族で相談しましょう。
[質問]喪中ですが初詣でおみくじをしてもいいですか?
[回答]おみくじを引いても問題ありません。ただし、初詣のタイミングは忌明け(五十日祭を終えてけから)としましょう。

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