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【これさえ見れば大丈夫】神道の葬式での服装や正しいマナーを神職が徹底解説!神葬祭に香典は不要?

【これさえ見れば大丈夫】神道の葬式での服装や正しいマナーを神職が徹底解説!神葬祭に香典は不要?

お葬式と聞くと、多くの人は「お寺」で「お坊さん」が行う仏教のお葬式を思い浮かべることでしょう。

しかし、葬儀は仏教によってのみ行われるわけではなく、日本独自の宗教である神道に基づいて行われる葬儀も、日本各地で行われています。

神道と仏教は異なる宗教であるため、神道の葬儀と仏教の葬儀では式の流れやマナーが異なります。
そのため仏教の葬儀に参列経験がある人でも、いざ神葬祭に参列するとなると

「仏教の葬儀と何が違うの」「服装は何を着ればよいの?」「気を付けるべきマナーは?」

と迷ってしまうこともあると思います。

ここでは神道式の葬儀の流れやマナー、玉串料(仏教における香典)の相場などをご紹介いたします。

INDEX

1. 神道のお葬式「神葬祭」とは?

神葬祭 祭壇

1-1. 神道の考え方に基づく葬儀

日本独自の宗教である「神道」の考え方に基づいた葬儀を「神葬祭(しんそうさい)」といいます。

現代において、日本の葬儀の大半は「仏教式」で行われますが、「神道」の考え方に基づいて行われる神葬祭も、日本全国で見ることができます。

1-2. 日本古来からある儀式

神葬祭の文化は「古事記」「日本書紀」にも記載があります。

天若日子(あめのわかひこ)という神様が亡くなった際、古事記ではこのような場面が描かれています。

天若日子が妻、下照比売が哭く声、風と響きて天に到りき。是に天に在る、天若日子の父天津国玉神と其の妻子と聞きて、降り来て、哭き悲しみて、乃ち其処に喪屋を作りて、河鴈をきさり持と為、鷺を掃持と為、翠鳥を御食人と為、雀を碓女と為、雉を哭女と為、如此行い定めて、日八日夜八夜以て、遊びたりき。(古事記上巻より)

これによると、天津国玉神と妻子が、天若日子の死を嘆いて喪屋を作り、様々な鳥たちに食事などの準備をさせ、八日間に渡って踊り遊ぶことで死者の弔いをしたと描かれています。これらの儀式が、古来の神葬祭だったと考えられています。

1-3. 現在は仏教式の葬儀が多数

現在、日本で行われている葬儀のうち90%近くは仏式で葬儀を行っています。

宗教行事の形式(2017年度版)出典:第11回「葬儀についてのアンケート調査」報告書|日本消費者協会(2017年)

神葬祭が日本古来の葬儀の形であるにもかかわらず、日本人が仏教式で葬儀行うようになったのは、江戸時代の「寺請制度」の名残りであるといわれています。

寺請制度とは、江戸時代初期にキリスト教を禁止するために行われた政策で、すべての人々をいずれかの寺院に所属するように取り決めた制度です。
「寺請制度」は明治時代には廃止されましたが、この制度の名残りによって式や法要はお寺が請け持つようになったといわれています。

1-4. 神葬祭では“香典”は不要!?

神葬祭では“香典”は必要ありません、と聞くと驚かれると思いますが、「香典」とは仏教特有の言葉で、神葬祭で香典という言葉は使いません。納める金銭という意味では同じですが、仏教式でいう香典にあたるものを、神葬祭では「玉串料」といいます。

このように、同じ「葬儀」ではあるものの、神葬祭と仏教式の葬儀では儀式の内容やマナーが大きく異なります。些細なことがマナー違反や、場合によっては故人や遺族に対して失礼になってしまいますので、参列の際はしっかりとポイントを押さえておきましょう。

2. 神葬祭と仏教式の相違点は?

神葬祭と仏教式の葬儀は、異なる宗教に基づいた葬儀であることから、死生観や葬儀の目的、作法に至るまであらゆる場面で違いがあります。

以下、主な違いを簡単にまとめました。

※仏教については宗派や解釈によって意味合いが大きく異なります。また、神道と仏教の対比は必ずしも同じ意味ではなく、意味合いとして近いものを並べています。

神道と仏教の違い

2-1. 死生観

神道

神道は、祖先を崇敬する信仰を基にしています。氏族の始祖は氏神様であり、祖先は一家の守り神として考えられています。そのため、人が亡くなると祖先の神様の仲間入りをし、新たな一家の守り神の仲間入りをすると考えられています。

江戸時代、伊勢神宮神官であった中西直方は、詠歌集「死道百首」の中で「日の本に生まれ出でにし益人は 神より出でて神に入るなり」と詠んでいます。

これは、「人は祖先の神様より命を戴いてきたため、いずれは祖先の神様のところへ帰り神様になる」という意味で、神道の考え方では、人は亡くなると祖先の神様と一緒に守り神になる、という神道の死生観を表しています。

 

仏教

仏教では、生物が輪廻する6つの世界である六道(天道、人間道、修羅道、畜生道、餓鬼道、地獄道)があると考えられており、亡くなると生まれ変わりながら六道を何度も行き来するものと考えられています。

人が六道の輪廻転生を抜け、悟りの境地である極楽浄土に解脱する方法を説き、個人の魂の救済をするのが仏教の教えです。

2-2. 葬儀の目的

神道

神道では、故人の御霊(霊魂)はわが国、わが家に留まって「守り神」になると考えられています。

そのため神葬祭は「故人の御霊(みたま)を家に留め、一家の繁栄を見守ってもらうようにお祀りをする」ことを目的として行われます。神葬祭ではまず、故人の復活を祈る儀式が行われます。(→通夜祭)

次に、故人が亡くなったことが確定した後は、故人の御霊を霊璽(れいじ:故人の御霊を移すもの)に移す儀式が行われます。(→遷霊祭)
故人の御霊が宿った霊璽は、後に各家や地域にある祖霊舎に祀られ、子孫の繁栄を見守ると考えられています。

 

仏教

仏教の葬儀とは、亡くなった方が無事に極楽浄土に旅立てるよう、次の世へと送り出す儀式です。

なお「往生即成仏」の考えである浄土真宗の葬儀は、阿弥陀如来への感謝と、故人を通じて参列者が自分自身を見つめなおす意図をもつ儀式として行われます。

2-3. 作法

神葬祭と仏教式での葬儀は、異なる儀式であるため作法も全く異なります。それぞれの作法の中から特徴的な作法をご紹介いたします。

神道

神葬祭での特徴的な作法は「玉串奉奠」です。

玉串奉奠は、神様に玉串を捧げ、二礼二拍手一礼の作法でお参りをする、神道特有の作法です。葬儀では音を立てない「忍び手」の拍手をします

 

仏教

仏教式での特徴的な作法は、参列者が順に香を焚く「焼香」です。

焼香は、焼香から立ち上がる煙が仏様の食物である、といわれています。

2-4. 言葉遣い

知人の葬儀に参列し、喪主の方や個人のご遺族とご挨拶する際の挨拶にもそれぞれ決まりがあります。なお葬儀の場で広く使われている「ご愁傷様です」という言葉は、神葬祭でも仏教式でも使用できます。

神道

神道では、故人は「一家の守り神」となると考えられており、故人が亡くなったことを嘆く、という考え方ではありません。

そのため神葬祭では「御霊のご平安をお祈りします」や「安らかに眠られますよう」などの言い回しをします。

 

仏教

仏教の葬儀は、故人が無事に極楽浄土に旅立てるように送り出す儀式のため、死後の世界の幸せを祈る「ご冥福をお祈りします」や「お悔やみ申し上げます」とお声がけをするのが適切です。また、「冥福」や「成仏」という言葉も仏教の用語です。

2-5. 不祝儀袋の種類

神道

神道では「玉串料」を納めます。玉串とは神様へのお供えを意味しています。玉串料は「御榊料」や「御霊前」でも大丈夫です。

不祝儀袋は市販のもので大丈夫ですが、黒白もしくは双銀の水引のついた、文様の無い不祝儀袋を使いましょう

 

仏教

仏教式の葬儀では「香典」をお納めします。「香典」とは線香やお花の代わりに納めるものという意味があります。

不祝儀袋は神葬祭と同じく市販のもので大丈夫ですが、蓮の花の文様が描かれた不祝儀袋は仏教式専用のものです。

なお、具体的な不祝儀袋の書き方は以下をご参考ください。

2-6. 持ち物

仏教

仏教式の葬儀では、参列者は数珠を持参します。数珠は魔除けの意味合いや、仏様へ失礼のないようにする意味合いがあります。

数珠には宗派ごとに異なる「本式数珠」と、宗派問わずに使用できる「略式数珠」があり、略式数珠であれば宗派問わず使えるため、一つ持っておくと便利です。

2-7. 葬儀や墓地の場所

神道

神道の葬儀は、自宅や斎場・セレモニーホールで行われます。神葬祭を神社で行わない理由は、神道において死は穢れ(気枯れ:気が枯渇し不浄であること)とされており、神聖な神社にけがれを持ち込んではならないとされているためです。

またお墓は、神道では奥津城と呼ばれ公営または民営の霊園などに埋葬されます。

 

仏教

仏教式の葬儀の場合、葬儀は自宅や斎場で行うほか、お寺でも行われます。

また仏教式の場合のお墓は、公営・民営の墓地の他葬儀を執り行ったお寺のお墓の埋葬される場合もあります。

3. 覚えておきたい神葬祭の作法

神葬祭の各儀式では、基本的には司会(典儀)の方の案内に従って動きます。

しかし、手水や玉串奉奠は、神葬祭の中でひとりひとりが行う場面が何度かありますので、事前に覚えておくようにしましょう。

3-1. 手水の作法

手水は、各儀式がはじまる前に行うお清めの儀式です。神社でお参りするときにする作法と一緒です。

① ひしゃくを右手で持ち水を汲み、汲んだ水の水4分の1ほどを左手にかけて清めます。次にひしゃくを左手に持ち替え、同様に4分の1ほどの水で右手を清めます。

② ひしゃくを再び右手に持ち替え、4分の1ほどの水を左手の手のひらに受け、口に含んで軽くすすぎます。(この際、ひしゃくに直接口を付けることのないようにしましょう)

③ 最後にひしゃくを立て、残りの水を柄に流してからひしゃく置きに伏せて置きます。

3-2. 玉串奉奠の作法

玉串

玉串奉奠は、神様に玉串をお供えして拝礼する作法です。
参列者は、神職から順番に玉串を受け取り、祭壇に向かって拝礼をします。

① 自分の番が来たら、喪主とご遺族に向かって一礼をします。神職に一礼をし、玉串を受け取ります。その際、左手で玉串の中央部を下から支えるように持ち、玉串の根元を右手で被せるように受け取り、胸の高さで持ちます。

② 祭壇の玉串案(たまぐしあん:玉串をお供えする台)の前に進み、故人に一礼をします。玉串を立て、左手を右手に合わせ玉串に祈念を込めます。

③ 玉串を時計回りに180度回転させ、根元が祭壇に向くようにお供えをします。

④ 二礼 二拍手 一礼の作法でお参りをします。この際、拍手は音を立てない「忍手(しのびて)」の拍手を行います。

⑤ 神職や喪主、ご遺族に会釈をして自分の席に戻ります。

4. 神葬祭の服装は?留意点も紹介!

ここでは神葬祭に参列する際の服装や準備品を紹介します。

葬儀の知らせは突然やってきます。何日も前から準備万端で葬儀に参列する、ということはまずありません。
そのため、喪服やハンカチなど、必要なものは常日頃から準備を心掛けておきましょう。

4-1. 神葬祭の参列は準喪服が基本

神葬祭に参列する際の服装は、仏教式の葬儀の際に着用する服装と同様で問題ありません。

喪服には、正喪服・準喪服・略喪服がありますが、基本的に正喪服は喪主や配偶者などの近親者(三親等まで)が着用する服装です。

遺族、知人や友人として神葬祭に参列する場合は、準喪服を着用しておけば問題ありません。喪主や遺族よりも、格式が高くなってしまわない装いにすることが大切なです。

喪服

通夜祭

通夜祭に参列する場合、準喪服もしくは略喪服が適切です。具体的には男性はブラックスーツやダーク系のスーツ、女性は黒や紺・グレーのワンピースやスーツを着用します。

以前は、通夜に弔問するときは「急いで弔問に訪れた」という気持ちを表すためにも、喪服ではなく略喪服で参列することがマナーとされていました。

しかし最近では、通夜祭でも準喪服であるブラックフォーマルを着用する人が増えています。準喪服であればどのタイミングでもマナー違反にはなりませんので、不安な人はすべて準喪服で統一してしまえば間違いはありません。

葬場祭(告別式)

葬場祭(告別式)では、男性は準喪服が基本ですが、略喪服である黒を基調とした控えめなダークスーツでも大丈夫です。

女性はブラックフォーマル、もしくは黒の略喪服を着用します。

4-2. 準備がない場合、紳士服店で購入を

一般的に、亡くなってから葬儀までは平均3日ほどかかるといわれています。連絡を受けてすぐに紳士服店で準備をすれば、当日仕上げや翌日仕上げで十分間に合いますので、持っていない方は購入を検討しましょう。

なお、急な葬儀の連絡で「喪服の準備がない」という方は、準喪服であるブラックスーツを準備することをおすすめします。

年齢を重ねていくにつれ、親戚や会社の関係で冠婚葬祭にお呼ばれする機会は増えていきます。準喪服であるブラックスーツを購入すれば、弔事だけでなく慶事でも使用できます。最近はスーツに調節機能がついており、体形が変わっても使用できるスーツが用意されているため、一着用意しておけば突然のことがあっても安心です。

<参考>当日・翌日仕上げが可能な紳士服専門店

洋服の青山|メンズ ブラックスーツスタイル(礼服・喪服)
AOKIフォーマルスーツ(礼服・喪服)
コナカフォーマルスーツ

4-3. アクセサリーや時計、バッグ類は必要最低限のものを

アクセサリー類は、結婚指輪以外は外すのが無難です。
ただし、真珠のネックレスなら1連の物、真珠一粒が固定されたピアスであれば付けても問題ありません。
時計は、華美なものでないものを心掛けましょう。

またバッグ類は、男性は持たないのが基本です。女性は黒無地で布製のシンプルなバッグを持つようにしましょう。

4-4. 殺生を連想させるものは控える

毛皮の装飾品や、羽毛のダウンなど、動物の殺生を連想させるものは着用を控えましょう。

4-5. 数珠は不要

神葬祭では必要ありません。数珠は念仏を唱える時に使用する仏教の道具であり、神道祭では使用しません。

5. 玉串料の準備方法は?

仏教式の葬儀では「香典」を納めますが、神葬祭では「玉串料」を納めます。玉串とは、神様へのお供えを意味する言葉です。玉串料は「御榊料」や「御霊前」と呼ぶ場合もあります。「榊」も玉串と同じく、神様にお供えするものを指します。

「香典」も「玉串料」も市販の不祝儀袋(ぶしゅうぎぶくろ)を用いて作成します。不祝儀袋はコンビニやスーパーで手に入ります。

5-1. 玉串料は結び切りの不祝儀袋に

玉串料を包む際の不祝儀袋は「黒白か双銀の結び切り(真結びやあわび結び)の水引がついた不祝儀袋」を用います。ただし、蓮の花が描かれている不祝儀袋は神道式では使用できませんので、注意が必要です。

表書きは上部に「玉串料」と記入し、下段に自身の名前をフルネームで記入します。中袋には表に「金壱萬圓」などと旧字で金額を記入し、裏には住所と名前を記載します。

また、記入する際は「薄墨」を使用します。これは、故人を悲しむ気持ちから涙で墨が薄くなってしまったとする説や、故人の不幸をいきなり聞いて急いで駆けつけたためにしっかりと墨を準備できなかったとする説もあります。

お札は、紙幣の肖像画が裏を向くように入れます(結婚式などの慶事と逆です)。またお札は新札ではなく、通常のお札を入れましょう。とはいえ、よれよれお札を包むのはマナー違反です。その場合、比較的新しいお札に折り目を付けて包むなどの工夫をしましょう。

玉串料 上袋の書き方
玉串料 中袋の書き方
玉串料 紙幣の入れ方

のし袋は上側が下にかぶさるように折りたたみます

のし 裏 折り方

5-2. 玉串料の相場一覧

玉串料の相場は、故人との関係性で決まります。

一般的な玉串料はおおよそ以下を参考にしてみてください。

玉串料の相場

6. 押さえておきたい~神葬祭の流れ~

神葬祭は、故人が逝去した翌日から、2日間にかけて儀式が行われます。

知人の葬儀の際、故人への最後のご挨拶として葬儀に参列することを「会葬」といい、会葬は基本的に「葬場祭」に参列します。ただし、故人と特に親しい間柄などで、親族から通夜祭の時刻のお知らせをいただいた際は、可能な限り通夜祭にも参列しましょう。そうでない場合は、葬場祭に参列するのがマナーです。

神葬祭の儀式

神葬祭 儀式

6-1. 逝去当日

6-1-1. 帰幽(きゆう)報告の儀

帰幽報告の儀とは、故人の死を神棚や祖霊舎(先祖をお祀りする祭壇)に報告する儀式です。

報告の拝礼の後には、神棚に白紙を貼って前面を覆い、忌明けである五十日祭の終了後まで神棚への拝礼やお祀りを中止します。

6-1-2. 枕直しの儀

故人に対する死を憂い偲んで、今後の葬儀の段取りを整える儀式です。

遺体を殯室(遺体を安置する部屋)に移し、頭が北向きになるように寝かせ、顔を白布で覆います。家族などの近親者や親しい知人が側に控え、故人の安らかな眠りを祈ります。

6-1-3. 納棺の儀

故人を棺に納める儀式です。

家族親族が集まり、故人の身支度を整え、生前に愛用したもの等とともに棺に納めます。

6-1-4. 柩前日供(きゅうぜんにっく)の儀

納棺が終わった棺の前に、故人が生前に好んだ食べ物をお供えする儀式です。

6-2. 神葬祭1日目

6-2-1. 通夜祭

通夜祭は、葬場祭の前夜に行われる、神葬祭の中でも重要な儀式です。古代、殯(もがり)という故人の蘇りを願う儀式があり、その風習からくるものです。

通夜祭では、神職が祭詞を奏上し、参列者は玉串を奉りて拝礼をします。お供え物は米、塩、野菜、果物などの通常のお供え物だけでなく、故人が生前好んだ食べ物なども一緒にお供えします。

~通夜祭の流れ~
※式の流れは通夜祭のみのものです。通夜祭と遷霊祭を合わせて執り行うこともあります。

① 手水の儀 儀式の前に、手水の儀式を行い身体を清めます。
② 参進 神職・喪主・家族・親族が斎場に入場します。
③ 斎主一拝 斎主が神前に向かって一礼をします。参列者も合わせて一礼します。
④ 献餞 祭員が神前に神饌(しんせん:米や酒などのお供え物)をお供えします。
⑤ 通夜祭祭詞奏上 斎主が故人を偲び、祭詞を奏上します
⑥ 斎主玉串拝礼 斎主が玉串拝礼をします。
⑦ 喪主・家族・親族玉串拝礼 喪主・家族・親族が玉串拝礼をします。
⑧ 参列者玉串拝礼 参列者が順番に玉串拝礼をします。
⑨ 撤饌 祭員が神前に供えられた神饌を徹します。
⑩ 斎主一拝 斎主が神前に向かって一礼をします。参列者も合わせて一礼します。
⑪ 退下 斎主以下、斎場から退場します。

※斎主…神職の中で、中心になって葬儀を進める人

6-2-2. 遷霊祭

遷霊祭は通夜祭に引き続き行われる儀式であり、故人の御霊を霊璽(れいじ:仏教におけるお位牌のようなもの)に遷す儀式です。通夜祭と一緒に執り行われることもあります。

遷霊祭では明かりを落とし浄暗の中、神職が祝詞(遷霊詞:せんれいし)を奏上の後、故人の御霊を遺体から霊璽に遷します。

通夜祭が「故人の蘇りを願う」儀式であることに対して、遷霊祭は「故人の死を認め、一家の守り神として御霊を留める」儀式であるという意味を持ちます。

6-3. 神葬祭2日目

6-3-1. 葬場祭(告別式)

葬場祭(告別式)は故人に対し最後のお別れとなる儀式で、喪主以下家族親族・参列者一同が集い、最も厳粛に行われる儀式です。

神職が奏上する祝詞の中で故人の経歴や功績・人柄などが語られ、また弔事や弔電の奉読が行われます。故人の面影を偲びつつ行われる、最後のお別れの儀式です。

① 手水の儀 儀式の前に、手水の儀式を行い身体を清めます。
② 参進 神職・喪主・家族・親族が斎場に入場します。
③ 斎主一拝 斎主が神前に向かって一礼をします。参列者も合わせて一礼します。
④ 献餞 祭員が神前に神饌(しんせん:米や酒などのお供え物)をお供えします。
⑤ 幣帛(へいはく)を供する 幣帛(お供え物)を神前にお供えします。
⑥ 葬場祭祭詞奏上 斎主が故人を偲び、祭詞を奏上します。
⑦ 斎主玉串拝礼 斎主が玉串拝礼をします。
⑧ 喪主・家族・親族玉串拝礼 喪主・家族・親族が玉串拝礼をします。
⑨ 参列者玉串拝礼 参列者が順番に玉串拝礼をします。
⑩ 幣帛(へいはく)を徹する 祭員が神前に供えられた幣帛を徹します
⑪ 撤饌 祭員が神前に供えられた神饌を徹します。
⑫ 斎主一拝 斎主が神前に向かって一礼をします。参列者も合わせて一礼します。
⑬ 退下 斎主以下、斎場から退場します。

告別式が終わると、火葬場に向けて出棺します。

6-3-2. 火葬祭

火葬祭は、火葬場で遺体の火葬に際して行われる儀式です。祭詞奏上の後、火葬炉を祓い清めます。

6-3-3. 帰家祭

火葬に付した遺骨と自宅(もしくは斎場)に戻り、一連の葬儀が無事に終了したことを神様に奉告します。

6-3-4. 埋葬祭

埋葬祭は、遺骨を埋葬することを奉告し、奥津城(おくつき:墓所)に遺骨を納めます。

埋葬祭は、葬儀当日に行うこともありますが、一旦遺骨と自宅に戻って五十日祭までに埋葬祭を行う場合もあります。

(参考)神葬祭後の流れ

以下は、埋葬祭まで終えたのちの流れです。主に遺族の方が故人に対して行う儀式です。

霊前祭

葬場祭の翌日から、御霊を慰めるおまつりを行います。

五十日祭(毎十日祭)

帰幽の日から数えて十日ごとに霊前・墓前で行う祭儀です。

五十日祭は最後の十日祭であり、一般的には五十日祭をもって「忌明け」とします。またこの日を境に仮の御霊舎から祖霊舎に合祀します。

五十日祭の終了後は、家の神棚に貼った白紙を取り除き、この日以降は神社へのお参りや神棚の参拝を再開します。

一年祭

一年祭は、帰幽の日から一年後に霊前・墓前で行われる祭儀です。一年祭以降は、三年祭・五年祭・十年祭と続きます。

年祭は自宅で行う他、神社で行う場合もあります。

7. 葬儀でもらった塩はどうするの?

お清めの塩

7-1. 家に入る前に塩でお清めをする

会葬の後に会葬の御礼などと一緒に塩をいただくことがあります。神道では死を穢れとして考えているため、穢れを家までもっと帰らないように塩でお清めをしてから自宅に入るようにしましょう。

お清め塩は、自宅に戻った際に玄関をまたぐ前に使用します。まず塩をひとつかみし、胸、背中、足元の順にふりかけます。

もし現地でいただけなかった場合、家にある塩でも構いません。

8. 葬儀に出席できない場合はどうしたらいい?

体調の問題や都合などで、急な訃報を受けても葬儀に出席できない場合は往々にしてあるものです。

その場合、どのように弔意を伝えればよいのでしょうか。

8-1. 玉串料だけ代理人に託す

葬儀を欠席する場合、代理の人に玉串料を渡すことで弔意を伝えることが出来ます。代理人に渡す場合、葬儀に出席する方でも、代理の方に自分の代わりに出席してもらうことも失礼にはなりません。

また、代理の方が見つからない場合は郵送で玉串料を送付しても良いでしょう。

8-2. 後日弔問をする

後日、故人のご自宅まで弔問に行く場合は、葬儀後3日以降ごろからが望ましいでしょう。弔問に訪れる際はあらかじめ遺族の方に連絡をして許可をもらうようにしましょう。

ただし、葬儀の直後はご遺族の方も慌ただしく、心身ともに落ち着かない状況であることも考えられます。そのため、かえって迷惑になってしまうことも考えられます。
可能な限り葬儀の場で弔意を伝えるようにしましょう。

9. まとめ

いかがでしたでしょうか。

神葬祭は、仏教式の葬儀と比べると参列する頻度は少ないかもしれません。

しかし、作法やマナーは仏教式の葬儀とは大きく異なります。まとめると

・神葬祭は「神道」の考え方で執り行われる葬儀。

・神葬祭と仏教式は、異なる宗教のため儀式やマナーが異なる。

・神葬祭は、故人を「一家の守り神」とする儀式。

・神葬祭独自の作法は「手水」「玉串奉奠」などがある。

・神葬祭では「香典」ではなく「玉串料」を渡す。

です。

参列する頻度は少ないとはいえ、参列する冠婚葬祭の作法は最低限のマナーです。記事をしっかり読み、葬儀の会場で恥ずかしい思いをせず、故人ときちんとお別れができるよう、しっかり準備をして臨みましょう。

<参考資料>

西牟田崇生「家庭の祭祀事典」(2005)国書刊行会
寒川神社祭儀部祭儀課「寒川神社御祖講 神葬祭の手引き」(2018)
沼部春友・茂木貞純「神道祭祀の伝統と祭式」(2018)戎光祥出版
神社本庁「改訂 諸祭式要綱」(1959)神社新報社

9. よくある質問

[質問]神葬祭とは何ですか。
[回答]神葬祭とは、神道の考え方によって執り行われる葬儀です。仏教式とは儀式やマナーが異なります。
[質問]神葬祭特有の作法はありますか。
[回答]神葬祭特有の作法としては手水や玉串奉奠があります。また、言葉遣いも仏教式とは異なります。
[質問]神葬祭で「香典」にあたるものはなんですか。
[回答]神葬祭では納める金銭のことを「玉串料」もしくは「御榊料」「御霊前」といいます。「香典」という言葉は使いません

 

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