INDEX
1. 安産祈願とは?
1-1. 妊娠中の母子の健康と無事の出産を神様に祈るご祈祷
安産祈願とは、妊娠中の母子の健康と無事の出産を神様に祈るご祈祷です。
ご祈祷とは、神職が神様に願い主である妊婦さんの願いを伝え、安産の祈りを捧げます。社の前でお賽銭を入れ手を合わせるお参りに比べ、より正式なお参りの方法です。
1-2. 8割以上の妊婦さんが安産祈願をする
(出典:ベビカムリサーチ「両親も一緒に?さらし帯は巻く?祈願スタイルはさまざま」)
アンケート結果によると、およそ85%もの方が安産祈願に行っています。
安産祈願は「絶対に行かなければならない」というものではありませんが、出産直前は誰もが不安になるもの。
心を落ち着けかせ、神様の前で安産祈願すれば、不安な気持ちも和らぎます。一つの家族イベントのような気軽さで神社を参拝するのもよいでしょう。
安産祈願は日本に古来からある伝統的な風習です。赤ちゃんが生まれる前の良い記念にもなりますので、ぜひ安産祈願をしてみましょう。
2. 戌の日とは?
2-1. 「戌の日」とは十二支の「戌」にあたる日
「令和6年はたつ年」というように、ね、うし、とら…と12種類の動物が順番に並ぶ干支は日常でもよく耳にします。
実は干支は年だけではなく、月や日にも割り当てられています。
干支は古代中国の陰陽五行説や易といった考え方から発生したもので、月日や時間を表すのに用いたり、占いに用いられたりしました。
戌の日は、干支のうち戌(いぬ)が割り当てられた日をいい、十二支が一周する12日に一度の周期でやってきます。
2-2. 戌は安産の守り神
犬は一度にたくさんの子犬を産み、なおかつ出産が軽いことから「安産の守り神」といわれています。
昔は医療が発達しておらず、出産は今以上に命がけの一大行事でした。そんななか妊婦さんと赤ちゃんの無事を祈り、多産・安産の象徴である戌に少しでもあやかろうと人々が願いをこめたことから、戌の日に安産祈願をする風習がはじまったと言われています。
また地域によっては、犬は吠えて邪気をはらい子供を悪霊から守るといわれており、子供にとっても縁起がいい動物といわれています。
2-3. 【令和5年~令和6年】戌の日カレンダー
令和5年(2023年)令和6年(2024年)の戌の日をご紹介します。安産祈願の日取りを決める際にご活用ください
3. 安産祈願はいつ行けばよい?
3-1. 安産祈願をするのは「妊娠5ヶ月目の最初の戌(いぬ)の日」
安産祈願は一般的に、「妊娠5ヶ月目の最初の戌の日」に行うといわれています。
このころになると妊婦さんが安定期に入り、お腹の赤ちゃんの成長も安定してくることから、妊娠月5ヶ月目に安産祈願を行うようになったといわれています。
戌の日に安産祈願をするようになったのは、江戸時代の半ば以降から見られる風習です。当時は戌の日以外にも「酉の日」「寅の日」が安産の吉日とされていたといいます。
3-1-1. 戌の日に安産祈願をする妊婦さんは7割以上
アンケートによると、半数以上の妊婦さんが戌の日の慣習にこだわって安産祈願をしているのがわかります。
(出典:ベビカムリサーチ「両親も一緒に?さらし帯は巻く?祈願スタイルはさまざま」)
3-2. 妊婦さんの体調を最優先に日取りを決めましょう
3-2-1. 安産祈願は戌の日以外でもよい
戌の日に安産祈願をする風習は現代にも受け継がれていますが、必ずしもこだわる必要はありません。
安産祈願の日取りを決めるうえで一番大切なのは、妊婦さんの体調、です。
妊婦さんの体調や天候を考え、妊婦さんに負荷がかからないような日取りを選びましょう。有名な神社では、戌の日や土日は、ご祈祷までの待ち時間が発生することもあります。戌の日の風習は、あくまで目安として考え、妊婦さんの体調にあわせて安産祈願をするようにしましょう。
3-2-2. 六曜やお日柄も気にしなくて大丈夫
同じように六曜(大安や仏滅など)も、こだわる必要はありません。六曜はあくまで俗信ですので、妊婦さんの都合を第一に考え、日取りを決めて大丈夫です。
3-2-3. 戌の日は帯祝いを行う日ともいわれている
妊娠五ヶ月目の戌の日は「帯祝い」を行う日ともいわれています。帯祝いとは、妊婦さんが妊娠して初めて腹帯(岩田帯)を巻きはじめるお祝いで、これを戌の日に行うことで安産を願う風習です。
安産祈願で腹帯を巻く風習の歴史は古く、古事記によると今から1800年ほど前、応神天皇を身ごもった神功皇后はお腹を守るために腹帯(岩田帯)を巻いて戦に参加したことが起源といわれています。江戸時代になると庶民にも広まり、安定期に入る妊娠5ヶ月目の戌の日に妊婦さんが腹帯を巻くことで、妊娠したことを周囲に披露する意味があったといわれています。
現在も腹帯の風習は受け継がれ、妊婦さんは妊娠5ヶ月目のの最初の戌の日に腹帯をまき始め、赤ちゃんの無事の誕生を願います。
妊娠5ヶ月目の戌の日に安産祈願に行きたかったのに行けなかった、という人は、戌の日を腹帯をまき始める一つの目安と考えてみるのもよいでしょう。
3-3. 安産祈願に期限はありません
安産祈願の目安である5ヶ月目を過ぎてしまっても問題ありません。安産祈願は期限のあるものではありません。
中には出産間近で安産祈願をする人もいます。あくまで妊婦さんの体調と都合を第一に考えて行うようにしましょう。
もちろん時期を早めて安産祈願をしても大丈夫です。暑い時期や寒い時期には無理をせず、少し時期をずらすなどして、妊婦さんの体調と気候のいい日を選ぶことが大切です。
4. 安産祈願は誰と行く?
4-1. 誰と行っても大丈夫
安産祈願は誰と行っても大丈夫です。ご夫婦二人でお参りに行く方や、妊婦さんのお母さんが付き添う場合もあります。
もちろん安産祈願は家族みんなのおめでたい行事ですので、家族揃って安産祈願をする方もいます。いずれにせよ、妊婦さんの体調を考えて、いざという時に頼れる人と一緒に行くのがよいでしょう。
4-2. 初穂料を納めるのは妊婦さんと旦那さん
安産祈願に行った場合、妊婦さんと旦那さんが自分たちで初穂料を納めることが多いようです。
もちらん明確な決まりはありません。子供の誕生を願う気持ちはご両親や義両親も同じなので、申し出があった場合には素直に甘えてしまうのもよいでしょう。
(出典:kosodate LIFE(子育てライフ)「【実態調査】安産祈願の初穂料は誰が払う?食事は?腹帯は誰が買う?」)
5. 安産祈願に行く前の事前準備
安産祈願を受ける妊娠5ヶ月は安定期に入ったとはいえ、妊婦さんにとって外出は大変なことです。神社に到着してからスムーズに安産祈願ができるよう、事前にホームページで確認し、準備を整えお参りに行きましょう。
ホームページがない場合は、神社に直接電話で確認しても大丈夫です。
5-1. 受付時間の確認
安産祈願の受付時間は神社によって異なります。仏滅の日は空いていない場合や、お祭りでご祈祷の受付をしていない場合もあります。
せっかく神社に行ったのに開いてなかった、といったことが無いよう、事前に確認しておくと安心です。
5-2. 予約の確認
ほとんどの神社では、安産祈願を受ける当日に受付をしますが、あらかじめ予約が必要な場合もあります。
予約が無い場合、安産祈願を受けることが出来ないなんてこともありますので、確認しておきましょう。
5-3. 初穂料の準備、あると便利な持ち物をチェック
5-3-1. 事前に初穂料の準備をしましょう
ご祈祷を受ける際に神社に渡す初穂料は神社によってまちまちですが、一般的に5,000円~10,000円が相場です。ほとんどの神社では安産祈願の初穂料はあらかじめ決まっていますので、確認しましょう。
また、初穂料はのし袋に入れて神社に納めるのがマナーです。事前に準備しておけば神社の受付であわてることなくスムーズに初穂料を渡せます。初穂料をのし袋に入れる際は、できるだけ新しいお札を入れるようにしましょう。
>>>初穂料に関する記事はこちらもご覧ください。 【神職が画像で紹介】初穂料はどんな封筒に入れる?書き方やお金の入れ方、神社での渡し方まで解説|産泰神社 このはな手帖 |
5-3-2. 初穂料がはっきりと明記されてない場合は相場の金額を納めましょう
神社によっては安産祈願の初穂料が「5,000円より」など、はっきりと明記されていない場合があります。その場合、そのまま5,000円を納めてしまって問題ありません。もちろんお気持ちで1,000円~2,000円追加で納めても大丈夫です。
「お気持ちで」などと、金額がまったく明示されていない場合は、一般的な初穂料である5,000円〜10,000円程度を用意しましょう。
納めた初穂料が少ないから御利益が少ない、なんてことはないのでご安心くださいね。
5-3-3. あると便利な安産祈願の持ち物チェック
安産祈願に持っていくと便利な持ち物を紹介します。腹帯は神社でも受けられますが、自身で購入したものを持っていくとお祓いをしてくれる場合もあります。
また、万が一体調が悪くなった時のために母子手帳を持参しましょう。寒い時期にはカーディガンやブランケットを用意しておくと安心です。
<あると便利な持ち物>
・腹帯
・母子手帳
・手提げ袋
・カーディガンやブランケット
5-4. 妊婦さんは無理のない緩やかな服装で
安産祈願は神様の前で行われる儀式なので、きちんとした服装をするようにしましょう。とはいえ、妊婦さんは体調が第一です。お腹を締め付けない緩やかなワンピースや、温度調節ができるようなカーディガンなど、体に負担にならない服装を選びましょう。
付き添いの男性は、スーツもしくはビジネスカジュアルな服装でお参りしましょう。
>>>安産祈願服装については、こちらで詳しくご紹介してます。 【神職がお答えします】恥ずかしくない!安産祈願に行く服装選びのポイント紹介|産泰神社 このはな手帖 |
6. 神社での安産祈願の流れは?
安産祈願の当日、神社についたらまず鳥居の前で一礼します。手水で手を清めたら、ご祈祷の受付をしましょう。
6-1. 受付をすませ、順番になったら御神前へ
神社によって異なる部分もありますが、ここでは安産祈願の一般的な流れを紹介します。
受付
まずは神社の受付でご祈祷の受付をします。申込用紙には妊婦さんの名前、今住んでいる住所を記入します。初穂料は、申込用紙を渡す際に一緒に渡します。その後、待合室や境内で順番を待ちます。戌の日や土日は、ご祈祷までの待ち時間がある場合もあります。
授与品を受ける
神社によって順番は異なりますが、ご祈祷の前後に、安産祈願にまつわるお神札、お守りなどを受けます。授与品の内容は、神社によって異なります。
ご祈祷
神職によって、安産を祈念する祝詞が神様に奏上されます。祝詞では妊婦さんの名前と住所が読み上げられますので、心を静かに、一緒に神様に思いを伝えましょう。
ご祈祷時間は、おおよそ15分から20分程度です。
拝礼
ご祈祷の後はご神前で神様にお参りをします。二礼二拍一礼の作法で、お参りしましょう。
お参りが終わって鳥居を出る際も、神様に向かって一礼をします。
また、拝礼の際に玉串を使う場合もあります。下の動画を参考にしてみてください。
〈参考・玉串拝礼〉
6-2. 家に帰ったらお神札をお祀りしましょう
神社で安産祈願をすると、お神札やお守りなどの授与品がいただけます。
お神札は神棚や目線よりも高いところに南向き、もしくは東向きにお祀りをします。リビングなど、家族が集まる場所がよいでしょう。
お守りは、妊婦さん自身で身につけましょう。
7. 出産後、お神札やお守りはどうしたらいい?
7-1. お神札やお守りは、お宮参りの際に神社へ納める
神社で受けたお神札やお守りは、一年間自宅でお祀りし、神社に納めます。しかし安産祈願の場合、無事に出産が済んだら神社に納めて大丈夫です。赤ちゃんのお宮参り(初宮参り)のときに一緒に納めるのがよいでしょう。
お神札やお守りは、受けた神社で納めるのが本義ですが、遠方などの場合は近くの神社で納めても構いません。
8.安産祈願に行けない場合はどうしたらいい?
8-1. 神社に行かなくても安産祈願はできる
「安産祈願に行きたいけど、忙しかったり体調がすぐれなくて行けなさそう」という方向けに、2つの方法をご紹介します。
いずれの方法でも、妊婦さんは神社に行かないで安産祈願を受けることが出来ます。妊婦さんがいかなかったからといって、ご利益が少なくなることはありませんので安心してくださいね。
8-1-1. 代理の人にお願いする
妊婦さんご本人の体調がすぐれないなど場合は、代理の方にご祈祷を受けてきてもらっても構いません。
その場合、妊婦さんの名前で祝詞を読み上げるので、妊婦さん本人はその場にいなくても神様にお願い事を伝えることができます。
代理だからお願い事ができないなんてことはありませんので、ご安心ください。
8-1-2. 郵送でご祈祷を受ける
遠方に住んでおり神社に行くのが大変な場合、最近では郵送でのご祈祷を受け付けている神社もあります。
電話やWEBサイトから申し込み、神社でお祓いをした授与品を郵送してくれるというものです。
どうしても安産祈願で有名な神社のご祈祷を受けたいけれど遠方で行けないという方は、郵送祈祷を検討されてみるのもよいでしょう。
9.安産祈願で有名な神社紹介(関東編)
9-1. 水天宮(東京都中央区)
水と関係のある神社です。農業・漁業・船舶業者だけでなく、水には「流し出す」という作用があることから安産とつながり、子供の守護神、子授けなど子供にも縁の深い神社として知られています。東京メトロの「水天宮前駅」を降りてすぐに鎮座しています。
・WEBサイト:http://www.suitengu.or.jp
9-2. 子安神社(東京都八王子市)
燃え盛る産屋で御子を無事に産んだことから、安産の女神として有名な木花佐久夜毘売命(コノハナサクヤヒメノミコト)をご祭神とする神社です。安産祈願のご祈祷料は6,000〜30,000円で、12,000円(普通式)以上からは腹帯をいただけます。
・WEBサイト:https://koyasujinja.or.jp
・郵送祈祷 :対応あり
9-3. 大宮八幡宮(東京都杉並区)
応神天皇(おうじんてんのう)をお祀りしており、厄除けや安産、学業などにご利益があるといわれている神社です。東京の中心に位置することから”東京のへそ”と呼ばれ、親しまれています。
・WEBサイト:https://www.ohmiya-hachimangu.or.jp/
9-4. 産泰神社(群馬県前橋市)
木花佐久夜毘売命(コノハナサクヤヒメノミコト)をご祭神とする神社。産泰とその名が示す通り、「泰らかに産む」安産祈願の神社です。
安産祈願を受けた妊婦さんが行う「抜けびしゃく」の神事は、妊婦さんが底の無いひしゃくで水をすくい、そのまま水が抜けてしまうよう楽にお産ができることを願うものです。そのため江戸時代より、底のない抜け柄杓を神社に奉納するという珍しい信仰が残っています。
・ウェブサイト:https://www.santai-jinja.jp
・郵送祈祷 :対応あり
10. まとめ
安産祈願は、妊婦さんの都合のいいタイミングでいつ行っても大丈夫です。戌の日や吉日にこだわらず、妊婦さんに負担がかからないようにお参りに行きましょう。
神社での安産祈願は慣れないことが多く、堅苦しそうで不安に思うこともあるかもしれません。ですが、難しい決まりはありませんので、以下のポイントを押さえておけば大丈夫です。
・戌の日は安産多産な戌にあやかる風習
・妊娠5ヶ月目の戌の日は、腹帯をまき始める日
・安産祈願は、妊婦さんの都合に合わせていつ行ってもよい
・誰と安産祈願に行っても大丈夫
・神社にご祈祷の予約が必要か確認しましょう
・神社で受けたお神札はお宮参りのときに神社へ返しましょう
妊婦さんにとっても家族にとっても思い出に残る一日になるように、しっかりと準備をして安産祈願に行きましょう。
<参考資料>
・鎌田久子他(1990)「日本人の子産み・子育てーいま・むかし」勁草書房
・株式会社ベビーカレンダー https://corp.baby-calendar.jp
・Happy-Note.com https://www.happy-note.com/research/10767.html
・kosodate LIFE https://epark.jp/kosodate/enjoylife/k-pray-safe-delivery-fee_82273/
よくある質問
[質問]安産祈願はいついくものですか? |
[回答]一般的には妊娠5ヶ月目の最初の戌の日といわれますが、戌の日やお日柄にとらわれず、妊婦さんの体調に合わせて行くことが大切です。 |
[質問]戌の日とはなんですか? |
[回答]十二支の戌に当たる日のことで、12日に一度回ってきます。この日に安産祈願をすることで多産で安産な戌にあやかることができるといわれる江戸時代からの風習です。 |
[質問]安産祈願は誰と行くものですか? |
[回答]ご夫婦で行く方が多数ですが、家族で行く場合もあります。誰と行かなければいけないという決まりはありません。 |